AV新法とは│制作者・配信者向けにわかりやすく解説【行政書士監修】

最終更新:2026年7月/ 施行後の運用・改正動向により内容が変わり得ます。実務判断の際は最新の情報をご確認ください。

AV新法(正式名称:AV出演被害防止・救済法)の解説記事は多くありますが、そのほとんどは出演者を守るための解説です。「自分は制作する側だ。何をすれば適法なのか」——その問いに答える記事は、ほとんどありません。

この記事は制作側の実務対応のために書いています。まず、自分に適用されるかどうかから確認してください。

あなたの制作 適用
商業AV(メーカー制作) 適用される
同人・個人サークルの制作 適用される
カップル・夫婦での個人撮影(販売する) 適用される
ライブ配信(アーカイブ販売あり) 該当性の検討が必要
イラスト・アニメ・VTuber等の非実写 適用されない

この法律には「業として」という限定がありません。事業規模の大小、法人か個人か、商業か同人か——それらは適用の有無を左右しません。「うちは小さいから関係ない」は通用しない構造です。

AV新法の全体像|なぜできた法律か

この法律は、出演者が意に反して性行為の映像に出演させられ、それが公表されてしまうという被害を防ぎ、救済するために作られました。成年年齢の引下げにより、これまで未成年者取消権で守られていた18歳・19歳がその保護を失うことが直接の契機になりました。

立法の是非や評価には、この記事では立ち入りません。制作者として何をすれば適法かだけを扱います。

法律の構造マップ

この法律は、大きく5つのブロックでできています。以下のH2は、このブロックに対応しています。

ブロック 中身 この記事の該当箇所
①適用範囲 何が「性行為映像制作物」か 定義
②契約規制 書面の締結・交付 制作者の義務
③説明義務 契約前に説明すべきこと 制作者の義務
④期間規制 契約→撮影→公表のタイムライン 制作者の義務
⑤解除権 出演者が理由なく契約を解除できる 出演者の権利

制作者にとって最も影響が大きいのは、④期間規制⑤解除権です。この2つは、制作サイクルと資金繰りを直撃します。

義務を負うのは誰か

「制作している人」と一口に言っても、現場には複数の立場があります。誰に義務がかかるのか。

立場 考え方
制作し、公表する主体(メーカー・サークル・個人販売者) この法律の義務の中心。契約・説明・期間・記録のすべてを負う
出演者と契約する主体 書面交付・説明義務の直接の名宛人
撮影スタッフ・編集者 直接の義務者ではなくても、制作フローの中で義務の履行を担う。委託契約で役割を明記すべき
プラットフォーム(販売サイト) 自ら制作・公表する立場か、場を提供する立場かで評価が変わる

「外注が勝手にやった」は通りません。

撮影を外注し、そのカメラマンが説明義務の履行を怠った——という場面で、「自分は知らなかった」という抗弁がどこまで通るか。制作・公表する主体としての管理責任が問われると考えるべきです。

外部委託先には、義務の内容を共有し、契約書で役割を明記してください。「誰が説明するのか」「誰が記録を残すのか」を決めていない現場は、いずれ穴が空きます。

AV新法・撮影罪・わいせつ罪の役割分担

この3つを混同している制作者が非常に多い。まったく違う法律で、見ているものが違います。

法律 何を見ているか クリアの仕方
AV新法 契約と公表のプロセス 書面・説明・期間・記録
撮影罪 撮影行為への同意 実質的な同意と、その記録
刑法175条 コンテンツの中身(わいせつ性) 適切な修正
風営法 営業の形態 届出

4つとも、独立してかかります。AV新法に完璧に対応していても、無修正で売れば175条の問題は残る。同意書を取っていても、期間規制に違反すれば新法違反です。「1つクリアしたから安心」という発想が、いちばん危ない。

「性行為映像制作物」の定義|どこまで適用されるか

この法律が対象とするのは、ごく大まかに言えば実在する人の性行為等の姿態を撮影した映像で、公表を目的として制作されるものです。ここから3つの論点が出ます。

同人・個人制作も対象になる理由

この法律には「業として」「営利目的で」といった限定がありません。

風営法の届出義務が「営業を営む者」に課されるのとは、構造が違います。事業規模を問わず、契約して撮影し公表するなら、義務がかかります。

「同人だから」「個人でやっているから」「法人化していないから」——これらはすべて、義務を免れる理由になりません。むしろ実務では、体制のない小規模制作者ほど、義務の履行漏れが起きやすいという逆説的な状況になっています。

商業メーカーは法務担当がいて、契約書式を整えました。同人サークルや個人制作者は、古いテンプレのまま止まっていることが少なくありません。「AV新法対応」を謳っていないテンプレを使い続けているなら、それは危険信号です(→出演契約書の作り方)。

ライブ配信は対象か

ここは丁寧に場合分けが必要です。

形態 考え方
リアルタイム配信のみ(録画・販売なし) 「映像制作物」として制作・公表される物にあたるかが論点になる。純粋な同時送信のみであれば、この法律が想定する典型場面とは距離がある
配信をアーカイブ化して販売する 制作物として公表していると評価される方向に傾く。この形態を採るなら、契約・説明・記録の体制を整えるべき
切り抜き・ダイジェストを販売する 同上。元がライブでも、編集して販売すれば制作物としての性格が強まる

実務的な結論を言えば——「アーカイブを売るなら、対応する」という前提で体制を組むのが安全です。ライブとアーカイブの境界を法的に争うより、書面と記録を整えておくコストのほうがはるかに安い。

ここで見落とされる論点:「後から売りたくなる」

ライブ配信のときは「販売しない」つもりだった。だから契約書も作らず、説明もしていない。しかし、半年後に「あの回、切り抜いて売りたい」と思う。

そのとき、あなたには公表への同意も、契約書も、説明の記録もありません。改めて共演者に連絡を取ろうとしたら、もう関係が切れている——これが典型的な詰み方です。

だから、実務的な助言はこうなります。「売る可能性が1%でもあるなら、最初から書面を作っておく。」後から遡って作ることはできません。

イラスト・アニメ・VTuberは対象外

この法律が対象とするのは実在の人物を撮影した映像です。イラスト、CG、アニメーション、非実写のキャラクター表現は、この法律の対象になりません。

ただし、注意点が2つあります。

  • 実在の人物の声・身体が使われている場合:モーションキャプチャや実写素材の合成など、実在の人物の姿態が映像に含まれるなら、評価は変わり得ます
  • 刑法175条は別レイヤー:非実写であっても、わいせつ性の問題は独立して存在します(→わいせつ罪の基準)

「公表」とは、どこからか

この法律は「公表」という行為に多くの規律をかけています。では、何が公表なのか。

行為 公表にあたるか
DL販売サイトで販売を開始する あたる
自社サイト・ファンサイトで配信を開始する あたる
無料でサンプル動画を公開する あたる方向。対価の有無は決定的ではない
撮影して、自分のPCに保存しているだけ あたらない
クローズドな場で一部の人に見せる 評価が分かれる。範囲と態様による

「サンプルだけ先に出す」は、期間規制との関係で危険です。本編の公表は待っているつもりでも、サンプルの公開が公表と評価されれば、期間規制に抵触し得ます。プロモーションの計画も、期間規制のタイムラインに乗せて設計してください。

既存作品の棚卸し|施行前の作品をどうするか

施行後、多くの事業者が直面したのがこれです。

いま販売している作品について、次を確認してください。

  • 出演者との契約書が残っているか。口頭・LINEだけで済ませていないか
  • 出演者の年齢を確認した記録が残っているか
  • 公表(販売開始)の日付が記録されているか
  • 出演者から削除の申し出があった場合、対応できる体制があるか
  • その作品をどこで販売しているか、一覧を持っているか

1つでも「ない」があれば、そこが弱点です。過去作こそ、体制が甘い。そして、行政の調査が入ったとき、最初に見られるのは過去作です。

記録がない過去作について「どうすればいいか」は、個別性が高い論点です。販売を続けるべきか、止めるべきか、出演者に改めて確認を取るべきか——ここは事情によって答えが変わります。放置が最悪の選択であることだけは確かです。

制作者に課される義務まとめ

まず一覧で押さえてください。

義務 タイミング 怠るとどうなるか
契約書面の交付 契約締結時 刑事罰・行政措置の対象になり得る
事前の説明 契約締結前 同上。加えて、後の紛争で決定的に不利
契約から撮影までの期間を空ける 契約後 撮影自体が違法になり得る
撮影から公表までの期間を空ける 撮影後 公表自体が違法になり得る
記録・書面の保存 契約時〜一定期間 義務を履行したことを証明できなくなる

契約書面の交付義務

出演契約は書面で締結し、出演者に交付する必要があります。「口頭で合意した」「LINEでやり取りした」では足りません。

記載すべき事項は法令で定められており、撮影内容、報酬、公表の方法・時期、解除に関する事項などが含まれます。ここでのポイントは——

「監督の指示に従うものとする」式の包括条項は、この法律の下では機能しません。

撮影される行為を具体的に特定することが、説明義務とも連動しているからです。何をするのか曖昧なまま契約させる、という運用は、法の趣旨に正面から反します。

契約書の具体的な条項設計(必須条項10選、書いてはいけない条項)は、出演契約書の作り方で詳しく扱います。この記事は法律の全体像、あちらは契約書の実務です。

事前の説明義務

契約を結ぶ前に、出演者に対して説明をしなければなりません。説明すべき内容には、契約の内容だけでなく、公表されることによって生じ得る影響——つまり、映像が拡散され、完全な削除は困難であるという現実——も含まれます。

説明すべき内容の骨格

法令で定められた説明事項の詳細は条文に譲りますが、実務で組み立てるときの骨格は次のとおりです。

説明のブロック 中身
①契約の内容 撮影される行為の具体的な内容、報酬、公表の方法・範囲・時期
②出演者の権利 契約を解除できること、その期間と方法
③公表による影響 映像は拡散し得ること、完全な削除は困難であること——ここを正面から説明することが、法の趣旨の中核
④相談窓口 困ったときにどこへ相談できるか

③を「営業上マイナスだから濁したい」と考える制作者がいます。それが最も危険な発想です。濁して契約させた事実は、後の紛争で必ずこちらを不利にします。そして、この説明を尽くしたうえでなお出演すると決めた人との仕事のほうが、結果として安定します。

実務の核心:「説明した」ではなく「説明したことを証明できる」状態を作る

後に紛争になったとき、「ちゃんと説明しました」という制作者の主張と、「聞いていません」という出演者の主張がぶつかります。そのとき、記録がなければ制作者が負けます。

だから実務では、説明の記録を残します。説明事項を記載した書面に確認欄を設けて署名をもらう、説明の場面を録画する、説明日時と説明者を記録する——形式は事案によりますが、「証明できる状態」がゴールです。

撮影から公表までの期間規制

制作サイクルを直撃する、最も実務インパクトの大きい規制です。

説明・契約 書面交付 待機期間 撮影 待機期間 公表(販売開始) 無条件解除できる期間 売上が立つのは、契約から半年以上あと しかも公表後も、一定期間は解除で止まり得る
図:AV新法の期間規制タイムライン(具体的な期間は{{LAW_CHECK}})

この規制が意味するのは、「今日契約して、明日撮って、来週売る」ができないということです。制作から収益化までのリードタイムが法定で延び、その間の制作費・出演料は先出しになります。

  • 資金繰り:回収が後ろ倒しになる。小規模制作者ほど効く
  • 企画:季節ものやトレンドに合わせた企画が組みにくい
  • スケジュール管理:作品ごとに「いつ契約し、いつ撮り、いつから公表できるか」を管理する仕組みが必須になる

スプレッドシート1枚でいいので、作品ごとの日付管理表を必ず作ってください。これを持っていない制作者は、いずれ期間規制に抵触します。

記録・書面の保存

何を、いつまで保存するか。ここは年齢確認の記録と一体で運用するのが合理的です。

保存するもの 目的
契約書(署名済み) 契約の存在と内容の証明
説明書面・説明記録 説明義務を果たしたことの証明
本人確認書類の写し・確認記録 年齢確認義務の履行の証明(→年齢確認)
契約日・撮影日・公表日の記録 期間規制の遵守の証明
撮影範囲の合意記録(NGリスト等) 同意の範囲の証明(→撮影罪)

共通するのは「やった」ではなく「やったことを証明できる」という思想です。この法律に限らず、撮影罪でも年齢確認でも、実務のゴールは同じです。

出演者の権利|無条件解除・販売停止

この法律の中核であり、制作側が最も影響を受ける制度です。

出演者は、公表後の一定期間、理由を問わず契約を解除できます。

「気が変わった」でも構いません。制作者の側に落ち度がなくても、解除は成立します。

解除されたら、制作側はどうなるか

制作者が本当に知りたいのはここでしょう。

論点 考え方
販売・配信 停止する必要がある。すでに流通しているものについても、回収等の措置が求められ得る
すでに払った報酬 解除を理由に、出演者に対して損害賠償を請求することは想定されていない構造になっている
制作費 制作者側の負担として残る。ここが事業リスクの本体
プラットフォームとの関係 配信中の作品を取り下げる必要があり、プラットフォーム側との契約処理も発生する

つまり、解除リスクは制作者が負うという制度設計です。これは法の趣旨から見て意図的なものであり、「不公平だ」と論じても実務は動きません。この前提でビジネスを設計するしかありません。

解除権を制限する条項は、書いても無効

ここで、制作側が最もやりがちな失敗を指摘します。

「解除権を放棄する」「解除した場合は違約金として◯◯万円を支払う」——こうした条項を契約書に入れても、無効です。

それどころか、無効な条項を入れていること自体が、行政の指導対象になったり、取引先審査でマイナス評価を受けたりします。「効かない条項を入れて、リスクだけ増やす」という最悪の結果になります。

解除の通知が来たら|実務フロー

起きてから考えると、必ず遅れます。先に手順を決めておいてください。

  1. 受領を記録する——いつ、誰から、どういう形で解除の意思表示が届いたか。ここが後の起点になります
  2. 直ちに販売・配信を停止する——自社サイト、DL販売サイト、提携プラットフォーム。止め忘れが最も危険です。作品ごとに「どこに出しているか」の一覧を平時から持っておく
  3. プラットフォームに取り下げを依頼する——各社の手順は異なります。平時に確認しておく
  4. 流通済みの分について、可能な措置を検討する
  5. 出演者に対応を通知する——何を、いつまでに止めたかを伝える。誠実な対応が、紛争化を防ぎます
  6. 記録を残す——いつ、何を止めたか。後に「対応しなかった」と言われないために

止め忘れが起きる典型:「昔、単発で卸した提携サイト」

自社サイトは止めた。大手プラットフォームも止めた。しかし、3年前に一度だけ卸した小さな配信サイトに、まだ残っている。——これが後から発覚すると、対応が不誠実だったと評価されます。

だから、作品ごとの「配信先リスト」を平時から管理してください。スプレッドシート1枚で足ります。

解除を封じることはできません。できるのは、解除が起きても事業が飛ばない設計をすることです。

  • 1作品への依存度を下げる(1本の解除で経営が傾かない構造)
  • 解除発生時の社内手順(誰が、何を、何日以内に止めるか)を決めておく
  • プラットフォームとの契約で、取り下げの手順を確認しておく
  • 出演者との関係を良好に保つ——これが最も現実的な予防策です。丁寧な説明、適正な報酬、範囲外の要求をしないこと

契約条項の具体的な設計は出演契約書の作り方へ。

違反した場合の罰則・行政措置

この法律は、刑事罰と行政措置の二本立てになっています。

内容
行政措置 勧告 → 命令 → 公表という段階。命令に従わない場合の刑事罰もある
刑事罰 一定の義務違反について、直接に刑罰が定められている

事業者にとって、いちばん重いのは「公表」です。

罰金は払えば終わります。しかし、公表されれば——プラットフォームは取引を切り、決済代行は審査を通さず、取引先は距離を置く。刑事罰より、公表のほうが事業を殺します。

そして、この法律の義務違反は「知らなかった」では通りません。法律を知らなかったことは、義務を免れる理由にならない——これは淡々とした事実です。

行政措置は、段階的に来る

段階 何が起きるか この時点でやるべきこと
①報告徴収・調査 状況の説明を求められる ここが分岐点。記録があれば説明できる。なければ、この時点で詰む
②勧告 是正するよう求められる 速やかに是正し、是正の記録を残す
③命令 法的な義務として是正を命じられる 従わなければ刑事罰
④公表 事業者名が世に出る この段階では、もう事業は動かない

最初の「①報告徴収」の段階で、勝負はほぼ決まっています。記録があれば「適正に運用しています」と説明できる。記録がなければ、実際に適正でも証明できない。「やった」と「証明できる」の差が、ここで牙をむきます。

具体的な法定刑・行政措置の要件は、{{LAW_CHECK}}

実務対応チェックリスト|今日からやること7つ

  1. □ 契約書式を点検する
    今使っている書式は新法対応か。解除権を制限する条項が残っていないか。撮影内容は具体的に特定されているか → 出演契約書の作り方
  2. □ 説明フローを整備する
    誰が、いつ、何を説明するのか。説明したことをどう記録するのか。説明の記録がないことが、最大の弱点になります
  3. □ スケジュール管理表を導入する
    作品ごとに「契約日・撮影日・公表可能日」を管理する。スプレッドシート1枚で足ります。これがないと期間規制に抵触します
  4. □ 本人確認・記録保存の体制を作る
    書類のランク、確認のタイミング、保管方法、保存期間 → 年齢確認義務の実務
  5. □ 既存作品を棚卸しする
    施行前に撮影した作品を、今も販売していないか。契約書・同意の記録が残っているか。過去作こそ、体制が甘い
  6. □ 解除発生時の社内手順を決める
    解除の通知が来たら、誰が受け、誰が販売を止め、プラットフォームにどう連絡するか。起きてから考えると間に合いません
  7. □ 外部委託先に周知する
    カメラマン、編集、スタジオ。「外注が勝手にやった」は通りません。委託先にも義務の内容を共有し、契約に落とす

この7つのうち、今日できるのは③です。

スプレッドシートを開いて、列を4つ作ってください。作品名/契約日/撮影日/公表日。これだけです。既存の作品を書き出して、日付を埋める。

埋まらない欄があれば、そこがあなたの弱点です。「いつ契約したか分からない」「公表日を記録していない」——それは、期間規制を守ったことを証明できないという意味です。

1時間で終わります。そして、この1枚が、行政の調査が入ったときにあなたを守ります。

体制がない小規模制作者へ

「法務担当なんていない。1人でやっている」——分かります。しかし、この法律は、体制の有無で義務を減らしてくれません。

だから、最小限の型を持ってください。

必要なもの 最小限の形
契約書 新法対応の書式を1つ作り、使い回す(内容は都度確認)
説明の記録 説明事項を書いた紙に、確認欄と署名をもらう
年齢確認の記録 身分証の写し+確認日・確認者を書いたメモ
日付の管理 スプレッドシート1枚
配信先の管理 同じシートに列を1つ足す

これで足ります。大きな会社と同じ体制は要りません。しかし、この5つがなければ、何かあったときに何も証明できません。

よくある質問

Q1. 夫婦・カップル間の撮影にも適用されますか?

撮影して二人の間で保管しているだけであれば、この法律が想定する「公表を予定した制作」とは局面が異なります。変わるのは、販売・配信する場合です。公表を前提に撮るのであれば、相手が配偶者でも出演者です。関係の近さは、書面や説明を省略してよい理由になりません。むしろ、関係が壊れたときの紛争は最も深刻になります。

Q2. 新法より前に撮影した作品はどうなりますか?

法律の適用は原則として行為の時点を基準に考えますが、この法律は公表という行為にも規律を及ぼす構造です。施行前に撮った作品を今も販売している場合、どの行為をいつしたのかで評価が変わり得ます。既存作品の棚卸しは、多くの事業者が直面した課題です。個別判断が必要な領域なので、相談してください。

Q3. 海外サイトで販売すれば新法は関係ないですか?

関係ないとは言えません。規律されているのは国内での制作行為と契約行為です。国内で契約し、国内で撮影しているなら、販売先が海外でも義務は免れません。詳しくはOnlyFansと日本法へ。

Q4. モザイクなしの作品には適用されませんか?

適用と無関係ではありません。この法律は契約・説明・公表のプロセスを規律するもので、コンテンツの中身がわいせつかを判断する法律ではありません。無修正なら刑法175条の問題が別途生じるだけです(→わいせつ罪の基準)。二層構造で理解してください。

Q5. 違反すると即逮捕ですか?

行政措置(勧告・命令・公表)と刑事罰の両方が用意されています。いきなり刑事手続きに直行する建て付けばかりではありませんが、「指導が来てから直せばいい」は危険です。前述のとおり、事業者にとっては公表のほうが刑事罰より重いことがあります。

この法律を、どう捉えるか

制作者から、こう言われることがあります。「規制が厳しくなって、やっていられない」。

気持ちは分かります。期間規制は資金繰りを圧迫し、解除権は事業リスクを一方的に制作側に負わせています。負担が増えたのは、事実です。

そのうえで、実務家として言えることがあります。

この法律の義務は、すべて「記録を残す」という一点に収束します。書面を交付する。説明した記録を残す。日付を管理する。年齢を確認して記録する。

そして、記録があるということは、あなたが適正にやっていたことを証明できるということです。

行政の調査が入ったとき。出演者と揉めたとき。決済代行に審査されたとき。プラットフォームに説明を求められたとき。——そのすべてで、記録があなたを守ります。

記録がない制作者は、実際に適正にやっていても、それを示せません。この法律は、まともにやっている制作者と、そうでない制作者を、分ける仕組みでもあります。

負担を減らす方法はありません。しかし、負担を「資産」に変えることはできます。整った記録は、そのまま決済審査への回答になり、取引先への信用になります。

この法律は、施行がまだ新しく、運用が固まりきっていない領域です。解釈が示され、実務が積み上がるにつれて、求められる水準も変わり得ます。「一度体制を作ったから安心」ではなく、定期的に見直す前提で運用してください。

なお、本記事は制作者向けの実務解説であり、立法の是非や政策的な評価には立ち入っていません。求められているのは、賛否を論じることではなく、義務を正確に把握して実装することだからです。

まとめ

  • 「業として」の限定がない。同人・個人撮影も対象。事業規模は関係ない
  • 義務は書面交付・事前説明・期間規制・記録保存の4本柱
  • 期間規制が制作サイクルと資金繰りを直撃する。日付管理表は必須
  • 出演者の無条件解除は封じられない。制限条項を書いても無効で、書いたこと自体がリスク
  • 事業者にとって最も重いのは公表という行政措置
  • すべての義務に共通するゴールは「やったことを証明できる状態」

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※本記事は2026年7月時点の一般的な解説です。個別の事案について適法性を保証するものではありません。