アダルトグッズ販売に許可は必要?必要な「届出」と手続を風営法専門の行政書士が解説
最終更新日:2026年8月2日
「アダルトグッズを販売するには、特別な許可が必要なのでは?」——そう思い込んで、参入を諦めてしまう事業者が少なくありません。しかし正確には、必要なのは行政に拒否の裁量がある「許可」ではなく、要件を満たした書類を提出すれば営業できる「届出」です。
一方で、この届出を知らずに無届で販売を始めると、刑事罰の対象になります。「怖くて参入できない」も「知らずに違法営業」も、どちらも避けなければなりません。
本記事では、風営法を専門とする行政書士が、次の3点を店舗販売・EC(通販)の両形態について解説します。
この記事で分かること
- アダルトグッズ販売に必要な届出の要否と手続の流れ
- 商品仕様によって追加される法令(薬機法・PSE・刑法175条など)
- 開業までのロードマップ・費用感・最短スケジュール
結論:販売に「許可」は不要。ただし「届出」が必要
結論から言えば、アダルトグッズ(性具)の製造・販売そのものに「許可」は不要です。ただし、販売の形態によっては風営法上の「届出」が必要になります。まず、混同されやすい3つの用語を整理しましょう。
- 許可:原則禁止された行為を解除するもの。行政側に拒否の裁量があります(例:スナック等の風俗営業1号許可)
- 登録:一定の要件を審査したうえで名簿に登載するもの
- 届出:法定の要件を満たす書類を提出すれば足りるもの。行政に拒否の裁量はありません
アダルトグッズ販売は、風営法上の「性風俗特殊営業」として届出制が採用されています。事業形態別の要否は次のとおりです。
| 事業形態 | 風営法上の扱い | 必要な手続 |
|---|---|---|
| 店舗でアダルトグッズを専門販売 | 店舗型性風俗特殊営業(6号) | 届出が必要 |
| EC・通販で販売 | 無店舗型性風俗特殊営業(2号) | 届出が必要 |
| 製造のみ(卸売・OEM供給) | 風営法の対象外 | 届出不要(薬機法等は別途注意) |
| 輸入して販売 | 販売形態に応じて上記のいずれか | 届出+関税法リスクに注意 |
つまり「何を作るか」ではなく「どう売るか」で届出の要否が決まるのがポイントです。なお、風営法の許可・届出制度の全体像は風営法の許可・届出 完全ガイドで詳しく解説しています。
店舗販売の届出:店舗型性風俗特殊営業
「専ら性的好奇心をそそる物品」に当たるかが分かれ目
店舗型の届出が必要になるのは、「専ら性的好奇心をそそる物品」を販売する店舗です。店舗の全部または主要な部分でアダルトグッズを扱う、いわゆるアダルトショップがこれに当たります。
一方、大手ディスカウントストアの店内にアダルトコーナーがあっても届出不要とされるのは、多種多様な商品のごく一部として販売しており、「専ら」性的好奇心をそそる物品の店舗とは評価されないためです。取扱いの比重が判断を左右します。
営業できない場所がある(禁止地域)
店舗型で最大の関門は立地規制です。次の場所では営業できません。
- 住居集合地域(用途地域による制限)
- 保全対象施設(学校・図書館・児童福祉施設・病院等)から概ね200m以内——距離や対象施設は都道府県条例で異なります
届出の必要書類
営業開始の10日前までに、営業所を管轄する警察署を経由して公安委員会へ届出します。主な書類は、届出書、営業の方法を記載した書類、営業所の平面図・周辺略図、住民票(本籍記載)、法人の場合は定款・登記事項証明書などです。図面作成は不備指摘が最も多いポイントです。
実務上の最重要注意点
店舗型は新規出店できる場所が極めて限られており、一度出店すると移転先を見つけるのが実質的に困難です。物件の賃貸借契約を結ぶ前に、必ず立地の適法性調査を行ってください。契約後に「営業できない場所だった」と判明するケースが実際にあります。
EC・通販の届出:無店舗型性風俗特殊営業
ネット販売も風営法の対象になる
見落とされがちですが、ECサイトやカタログでアダルトグッズの注文を受け、宅配等で販売する形態は、風営法2条7項2号の「無店舗型性風俗特殊営業」に該当します。自社ECでも、モール出店でも、注文を受けて配送するという構造は同じです。「ネットだから店舗がない=規制対象外」ではありません。
届出のタイミングと書類
届出は営業開始の10日前までに、営業の本拠となる事務所の所在地を管轄する警察署を経由して行います。届出書、営業の方法を記載した書類、住民票などに加え、販売サイトのURL等も記載します。店舗型と異なり立地規制はないため、事務所は自宅でも構いません(後述のFAQ参照)。
広告規制と年齢確認義務
届出をすれば終わりではなく、営業中も次の規制がかかります。
- 18歳未満を対象とする広告宣伝の禁止、清浄な風俗環境を害する方法での広告の禁止
- 18歳未満への販売禁止(年齢確認義務)
年齢確認の実務は、①成人向けページの手前にアダルトゲート(年齢確認画面)を設置する、②注文フォームで生年月日を入力させる、③注文時に「18歳以上である」ことのチェックを必須にする——といった実装の組み合わせが基本です。
無届営業の罰則
無届で営業した場合、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金(またはその両方)の対象となります。無届のECサイトが摘発された事例も実際に存在します。届出自体は難しい手続ではないだけに、「知らなかった」で前科がつくのはあまりに割に合いません。
商品仕様で追加される法令:薬機法・PSE・刑法175条・関税法
風営法の届出とは別に、「どんな商品を売るか」によって追加の法規制がかかります。ここを見落とすと、届出を済ませていても行政処分や刑事罰のリスクが残ります。
薬機法:「雑品」として売る鉄則は効能効果を標榜しないこと
アダルトグッズは通常「雑品(雑貨)」として販売しますが、広告や商品ページで身体への効能効果を謳った瞬間、医療機器等とみなされ薬機法違反となるリスクが生じます。
| NG表現の例 | 考え方・言い換え |
|---|---|
| 性機能改善/ED対策 | 医療機器的効能。記載自体を避ける |
| 血行促進/マッサージ効果 | 「心地よい刺激」など感覚表現に留める |
| 感度アップ/機能回復 | 「新しい感覚を楽しめる」等の主観表現へ |
また、ローションやラブコスメは配合成分と標榜内容次第で「化粧品」に該当し、化粧品製造販売業許可が必要になるケースがあります。違反時は措置命令・課徴金(対象売上の4.5%)・刑事罰の対象となり得るため、商品ページ公開前の表現チェックが不可欠です。
電動製品はPSE・電波法(技適)を確認
- ACアダプター同梱:アダプターがPSEマークの対象
- リチウムイオン電池内蔵:電池がPSE対象
- USB給電のみ(アダプター非同梱):PSE対象外となることが多い
- Bluetooth搭載のアプリ連動型:技適マークがなければ電波法違反
特に海外OEM品の輸入では、PSE・技適の確認漏れが頻発します。発注前にサプライヤーへ適合証明の有無を必ず確認してください。
刑法175条:わいせつ物頒布罪との境界
性具の販売自体は適法でも、性器を写実的に再現した商品は刑法175条のわいせつ物に当たるとして摘発された事例があります。業界で広く行われているデフォルメ処理は、単なる慣行ではなく、このリスクを回避するための実務上の意味を持っています。写実的な商品の輸入・販売を検討する場合は特に慎重な判断が必要です。
輸入販売は関税法の没収リスクに注意
わいせつ物に当たると判断された商品は、輸入禁制品として税関で没収されます。中国OEM輸入では、PSE・材質(肌に触れる素材の安全性)・形状(デフォルメの程度)の3点を発注前にチェックすることが実務の基本です。なお、没収処分に対する不服申立てや争訟は弁護士法72条との関係で弁護士マターとなりますので、その段階では弁護士への相談をご案内しています。
販売実務で押さえる周辺法令
最後に、販売を続けるうえで必ず関わる周辺法令を整理します。
- 特定商取引法:通販サイトには「特定商取引法に基づく表記」(事業者名・住所・電話番号等)の掲載義務があります。誇大広告も禁止です
- 景品表示法:効果の優良誤認、「今だけ半額」を常時表示するような有利誤認は典型的な違反パターンです
- PL法:身体に直接触れる製品のため、事故時の賠償リスクがあります。PL保険への加入を強く推奨します
- プラットフォーム規約:Amazon・楽天はアダルトカテゴリの出店条件が別に定められています。また決済代行会社のアダルト審査は厳格で、手数料も一般ECより高くなる傾向があるため、出店・決済とも事前確認が必須です
開業までのロードマップと費用感
開業までの5ステップ
- 事業形態の決定(店舗/EC/両方)
- 物件・ドメインの確保(店舗型は契約前に立地調査)
- 届出書類の作成・提出(営業開始10日前まで)
- 商品法務チェック(薬機法表現・PSE・年齢確認の実装)
- 販売開始
費用とスケジュールの目安
届出自体に行政手数料はかかりません(実費0円)。行政書士に依頼する場合の報酬相場はおおむね5万〜15万円程度(立地調査や図面作成の要否で変動)、PL保険は年間数万円からが目安です。書類が揃えば、最短2〜3週間程度で販売開始まで到達できます。
よくある質問
Q. 個人でも届出できますか?
A. 可能です。法人である必要はなく、個人事業主として届出できます。
Q. 自宅を営業所(事務所)にできますか?
A. 無店舗型(EC)は立地規制がないため自宅事務所でも届出可能です。ただし賃貸物件の場合は用途制限(事業利用の可否)を契約上確認してください。店舗型は禁止地域規制があるため自宅立地の確認が必要です。
Q. メルカリ等のフリマアプリで売る場合も届出が必要ですか?
A. 業として反復継続的に販売するなら無店舗型に該当し得ます。それ以前に、多くのフリマアプリは規約でアダルトグッズの出品自体を禁止しているため、実務上は自社EC等での販売が前提となります。
Q. 海外向けの越境ECのみの場合はどうなりますか?
A. 国内に営業の本拠を置き国内から発送する以上、届出対象と考えて対応するのが安全です。加えて販売先の国の法令(輸入規制等)の確認も必要になります。
Q. 届出せずに販売を始めたらどうなりますか?
A. 無届営業として6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金(またはその両方)の対象です。摘発されれば事業継続も困難になります。販売開始前の届出を徹底してください。
まとめ:届出は難しくない。難しいのは「届出の先」
本記事の要点は次の3つです。
- アダルトグッズの販売に「許可」は不要。ただし店舗・ECとも営業開始10日前までの「届出」が必要
- 商品仕様によって薬機法・PSE・技適・刑法175条・関税法のチェックが追加される
- 届出実費は0円。書類が揃えば最短2〜3週間で開業可能
届出そのものは適切に準備すれば通る手続です。実際に事業者がつまずくのは、店舗型の立地調査、商品ページの薬機法表現、輸入時のPSE確認といった「届出の先」にある論点です。当事務所では届出代行から開業スキーム全体の設計までワンストップで対応しています。まずは販売予定の形態と商品をお聞かせください。
執筆者
行政書士(登録番号:第22080418号)
風営法を専門とする行政書士。風営法の法体系や、規制趣旨に精通し、ナイトビジネス全般の適切な許認可取得、維持のサポートを得意としています。
