利用規約で定めるユーザー投稿コンテンツの著作権と利用許諾の重要論点

1 はじめに

この度は、当ブログにお越しいただき誠にありがとうございます。

SNS、ブログサービス、ECサイトのレビュー欄、オンラインコミュニティなど、現代のウェブサービスにおいて、「ユーザー投稿コンテンツ(UGC)」はサービスの価値を高める上で不可欠な要素となっています。ユーザーが投稿するテキスト、画像、動画などのコンテンツは、すべて著作権法上の著作物に該当する可能性があり、これらの権利をサービス提供者である事業者がどのように取り扱うかという点は、利用規約において最も複雑かつ重要な法的論点の一つです。

「利用規約 著作権 ユーザー投稿」というキーワードで検索されている方は、ユーザーが投稿したコンテンツの著作権の帰属、事業者がそのコンテンツを二次利用するための法的根拠、そして紛争を避けるための利用規諾の取得方法について、明確な知識を得たいという強いニーズをお持ちのことと思います。この取り扱いを誤ると、事業者がユーザーから無断利用として損害賠償請求を受けるリスクが生じます。

このブログでは、ユーザー投稿コンテンツの著作権の法的基本原則から、サービス提供者がそのコンテンツを安全に利用するために利用規約で定めるべき利用許諾条項の具体的な要件、そして、クリエイターであるユーザーの権利とのバランスをどのように取るべきかについて、行政書士の専門知識に基づき、詳しく、かつ丁寧に解説してまいります。あなたのサービス運営の法的安定性を高め、ユーザーとの信頼関係を築くための参考にしていただければ幸いです。

2 この記事を読んで理解できるユーザー投稿コンテンツの権利関係

この記事を最後までお読みいただくことで、ユーザーがサービス上にコンテンツを投稿した瞬間に発生する著作権の基本構造、そして、サービス提供者がそのコンテンツを自由に、かつ安全に利用するために利用規約で必ず定めるべき法的根拠について深く理解できます。

具体的には、コンテンツの権利帰属をサービス提供者にする場合の法的リスク、多くのサービスが採用する「利用許諾(ライセンス)」という手法の法的意味、そして、利用許諾条項を定めたにもかかわらず紛争の原因となりやすい「著作者人格権」の取り扱いについて詳しく知ることができます。

さらに、利用規約の整備に加えて、万が一の紛争に備えるための契約書の公正証書化の法的視点についても触れており、あなたのサービス運営におけるリスク管理の質を一段と高めるための具体的な手法が見えてくるでしょう。

3 利用規約の不備が原因で生じたユーザーからの著作権侵害訴訟の架空事例

これは、利用規約における著作権の取り扱いが曖昧であったために、ユーザーから著作権侵害として訴訟を提起された架空の事例です。

オンラインの旅行口コミサイトを運営するN社は、ユーザーが投稿する旅行記のテキストと写真を集約することで、サービス価値を高めていました。N社の利用規約には、「投稿されたコンテンツの著作権はユーザーに帰属するが、当社は無償で自由に利用できる」という非常に簡易な許諾条項しか記載されていませんでした。特に、二次利用や改変に関する詳細な規定はありませんでした。

ある時、N社はサイトの集客力を高めるため、投稿された写真の中でも特に高品質なものを厳選し、自社の販促用パンフレットや、旅行ガイドブックとして出版することを企画しました。これらは、当初のウェブサイトでの利用とは異なる、新たな用途での二次利用にあたります。

この出版物の中で自分の写真が利用されているのを発見したユーザーOさんは、「私はウェブサイト上での利用のみを許諾したつもりであり、商業的な出版物への二次利用は想定していない」と主張し、N社に対して著作権侵害として写真の使用差止と損害賠償を請求する訴訟を提起しました。

訴訟において、N社は利用規約の「当社は無償で自由に利用できる」という条項を盾に正当性を主張しましたが、Oさん側は、「ウェブサイトの利用規約という包括的な合意だけでは、出版という新たな目的での二次利用について、明確な許諾を与えたとは言えない」と反論しました。

最終的に裁判所は、利用規約に二次利用や改変に関する権利(著作権法第27条及び第28条の権利)を明確に許諾する旨の記載がなかったこと、および、利用目的や範囲が包括的かつ不明確であったことを重視し、N社の二次利用を許諾の範囲を超えた利用であると認定しました。この結果、N社は高額な損害賠償金の支払いを命じられ、出版企画は中止に追い込まれ、事業の信用も大きく損なわれました。

この事例は、利用規約において、ユーザーのコンテンツをどのような目的で、どこまで利用し、改変できるのかという「許諾の範囲」を具体的に、かつ法的な要件を満たした形で定めなければ、後の事業展開に致命的な支障をきたすことを示しています。

4 ユーザーコンテンツ利用の法的根拠と利用許諾の重要性

サービス提供者がユーザー投稿コンテンツを安全に利用するためには、著作権法の原則に基づき、利用規約を通じて適法な利用許諾(ライセンス)を得る必要があります。以下の三つの法的概念は、利用規約を作成する上で不可欠な視点となります。

一つ目は「著作権の権利帰属の原則」です。著作権法第2条第1項第1号では、「著作物」を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義しています。そして、著作権法第17条第1項には、「著作物を創作した者(以下『著作者』という。)は、その著作物を専有的に利用する権利を有する。」と規定されています。

この条文の解説としては、コンテンツをウェブサイトに投稿したとしても、そのコンテンツが著作物である限り、その著作権は原則として創作したユーザー本人に自動的に帰属する、という絶対的な原則を示しています。したがって、サービス提供者がコンテンツを利用するためには、必ず著作権を持つユーザーからの「許諾(ライセンス)」が必要となります。

二つ目は「二次利用と改変権の明確な許諾」です。上記の事例のように、サービス提供者が将来的に出版、グッズ化、広告利用といったウェブサイト上での利用とは異なる二次的な利用を想定する場合、利用規約において、著作権法第27条及び第28条に規定される翻訳権・翻案権(改変する権利)や二次的著作物の利用に関する原著作者の権利を明示的に許諾してもらう必要があります。

許諾の範囲を曖昧にすると、無断利用とみなされるリスクが残ります。許諾条項には、利用の目的、方法、期間、地域の範囲をできる限り具体的に記載し、「非独占的、無償、無期限、地域を問わず利用を許諾する」といった形で、事業者が利用できる最大限の範囲を明確に定めることが望ましいです。

三つ目は「著作者人格権の不行使特約」です。著作権とは別に、著作者(ユーザー)には、氏名表示権、公表権、同一性保持権といった著作者人格権が残ります。著作権法第59条に規定されるとおり、この権利は譲渡できませんが、利用規約において「著作者人格権を行使しない」という旨の不行使特約を利用規約に定めることが、サービス運営上は必須となります。

なぜなら、サービスのレイアウトに合わせて画像をトリミングしたり、誤字を修正したりといったコンテンツの「改変」を行うたびに、ユーザーから「同一性保持権の侵害だ」と主張されるリスクを避ける必要があるからです。この特約がなければ、サービス提供者はコンテンツを編集・利用するたびに、ユーザーの許可を得る必要が生じるという、実務上困難な事態に陥ります。

5 サービス提供者が二次利用を可能にするための利用許諾条項の文例

著作権法上の要件を満たし、サービス提供者が将来の事業展開に備えてユーザーコンテンツを安全に利用するための、利用許諾条項の具体的な文例を以下に示します。この文例は、クリエイターの権利を尊重しつつ、事業者の利用範囲を最大限に広げることを目的としています。

(ユーザー投稿コンテンツの著作権と利用許諾)

ユーザーが本サービスに投稿したコンテンツに関する著作権は、原則として、当該コンテンツを創作したユーザー本人に引き続き帰属するものとします。

ユーザーは、コンテンツの投稿をもって、当社に対し、当該コンテンツを、本サービスの運営、プロモーション、広告宣伝、および当社が別途企画する出版物、商品、サービスへの二次利用、またはこれらに準ずる目的で、非独占的、無償、無期限かつ地域を問わず利用することを許諾するものとします。この許諾には、著作権法第27条及び第28条に定める権利(翻訳権、翻案権、二次的著作物の利用に関する権利を含む)の行使の許諾を含むものとします。

ユーザーは、当社または当社が許諾した第三者が、上記の目的でコンテンツを利用する際、著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権、公表権など)を行使しないことをあらかじめ承諾するものとします。

この文例では、「著作権はユーザーに帰属する」ことを明記してクリエイターの権利を尊重しつつ、「第27条及び第28条の権利」と「著作者人格権の不行使」を具体的に定めることで、事業者の二次利用の法的根拠を確固たるものにしています。

6 書類は手間や費用を惜しまず、専門家に客観的な視点で助言をもらうことを一言添える

利用規約における著作権の条項は、サービスの成長と密接に結びついています。サービスが成功し、投稿コンテンツの商業的価値が高まった時に、利用規約の不備が原因で訴訟リスクに直面することは、上記の事例が示す通り、決して珍しいことではありません。著作権法上の複雑な権利の束(支分権)を、「無償で自由に利用できる」という抽象的な言葉だけで片付けることは、将来の事業展開に対する致命的なリスクとなります。

利用規約の作成やレビューにかかる手間や費用は、著作権侵害訴訟に伴う高額な損害賠償金やサービス停止のリスク、そしてブランドの信頼失墜といった、事業存続に関わるリスクと比較すれば、遥かに安価な「法的リスクヘッジ」です。専門家である行政書士に相談することで、著作権法上の要件を完全に満たし、サービス運営に必要な最大限の利用権限を、合法的に確保するための客観的な助言を得ることができます。私たちは、あなたのサービスの成長を妨げない、法的安定性の高い利用規約の作成をサポートいたします。

7 ユーザー投稿コンテンツの利用規約作成と紛争予防のご相談はこちら

当事務所では、SNS、コミュニティサイト、ECサイトなどを運営する事業者様を対象に、ユーザー投稿コンテンツの著作権と利用許諾に関する条項の作成、レビュー、および著作者人格権の不行使特約の組み込み支援を専門的に行っております。また、特に、サービス利用料や取引に関する金銭債務については、公正証書にすることによって、万が一の不払いに際して裁判を経ることなく強制執行手続きに移ることを可能にするための手続きについても、アドバイスを提供いたします。

ユーザー投稿コンテンツの著作権に関する疑問、利用規約の作成・見直し、または公正証書化に関するご要望がございましたら、どうぞご遠慮なくお問い合わせください。お問い合わせフォームはもちろん、LINEを通じたご相談にも迅速に対応し、お客様のサービス運営における法的安定性を全面的にサポートいたします。最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。