契約書作成を専門家へ依頼する費用対効果 報酬相場とリスク回避の経済的価値
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ごあいさつ
事業を安定させるため、あるいは大切な家族間の約束事を明確にするために、契約書の作成や公正証書化を検討されている際、当然ながら「専門家へ依頼した場合、一体いくらかかるのだろうか」という費用に関する疑問は、最も気になる点の一つでしょう。インターネットで検索しても、行政書士の報酬は事務所によって異なり、その相場感が掴みにくいと感じられるかもしれません。
行政書士の報酬は、単に紙面に文字を書き起こすことへの対価ではありません。それは、お客様の事業や財産、そして人間関係に潜む将来の法的リスクを診断し、そのリスクを未然に防ぐための「法的保険料」であると捉えるべきです。特に、契約書は、将来の紛争を防ぐための「盾」であり、その作成費用は、万が一の訴訟沙汰になった際に発生するであろう、時間、精神的負担、そして高額な弁護士費用といった潜在的なコストを大幅に節約するための先行投資なのです。
この記事では、契約書作成を専門家へ依頼する際の報酬が、どのような要素で決まるのか、その費用対効果を法的な観点から深く掘り下げて解説していきます。
行政書士の報酬体系と費用を支払うことで得られる三つのメリット
行政書士の報酬額は、以前のように報酬規程による拘束がなくなり、現在は各行政書士が自由に定めていますが、その決定にはいくつかの共通する要素があります。
契約書の複雑性・難易度
これは、契約の当事者が多岐にわたるか、国際取引やフランチャイズ契約といった特殊な法律知識が必要とされるか、あるいは秘密保持契約のように特定の技術的な理解が必要とされるかといった要素で判断されます。
契約書のページ数・ボリューム
契約書が長大であればあるほど、条項の整合性チェックや作成に要する時間が増えるため、報酬が高くなります。
交渉の有無
単純な文案作成だけでなく、相手方との契約内容に関する交渉代理(弁護士法に抵触しない範囲)や、公証役場との事前調整といった付随業務が発生するかどうかです。
これらの要素から決定される費用を支払うことで、お客様は主に以下の三つの決定的なメリットを得ることができます。
一つ目は、将来の訴訟リスクの極小化です。専門家が作成した契約書は、曖昧な表現や法的に無効となるリスクのある条項を排除し、紛争の火種を徹底的に取り除きます。
二つ目は、契約の目的の確実な達成です。公正証書作成を含めた場合、金銭の支払いに関する条項に強制執行力が付与されるなど、契約が守られなかった場合のリカバリー手段が確保されます。
三つ目は、時間と精神的な負担の回避です。自力で法的な文章を作成し、その有効性に不安を抱えることから解放され、事業や生活に専念できるという、金銭には換えがたい安心感が得られます。
費用を惜しんで自作した契約書が原因で高額な損害を負った架空の事例
これは、業務委託契約書を安価なテンプレートで済ませ、結果として専門家への依頼費用をはるかに超える高額な損害を負った架空の事例です。
ウェブデザイン事業を営む企業A社は、外部のフリーランスB氏にデザイン業務を委託するにあたり、インターネットで見つけた汎用的な業務委託契約書のテンプレートをそのまま使用しました。A社の社長は「簡単な契約だから」と専門家への報酬を惜しみ、自分で作成しました。このテンプレートには、業務の完了時期に関する規定はありましたが、納品物の瑕疵(欠陥)が発覚した場合の責任期間(契約不適合責任の期間)についての規定が曖昧なままでした。
納品から半年後、B氏が作成したウェブサイトに重大なセキュリティ上の欠陥が発覚し、A社は顧客から高額な損害賠償を請求されました。A社は、B氏に対して損害賠償を求めましたが、B氏は「納品から時間が経過しており、瑕疵担保責任(現行民法では契約不適合責任)の期間が過ぎている」と主張しました。
A社の契約書には、瑕疵の通知期間や責任期間が明確に定められていなかったため、民法が定める「買主が不適合を知った時から一年以内」という原則的な規定が適用されることになりました。しかし、この「知った時」の解釈を巡ってA社とB社の主張は対立し、問題解決には弁護士への相談や訴訟の検討が必要となり、結果的に専門家への依頼費用よりも遥かに高額な費用(弁護士費用、訴訟費用、事業の信用失墜による損害)を費やすことになってしまいました。
この事例は、契約書の作成費用を節約したことが、後の不確実性と紛争の温床となり、「安い契約書は、最も高い買い物になる」という現実を浮き彫りにしています。専門家への報酬は、まさにこのような「法的紛争の発生」という重大なリスクを回避するための費用なのです。
報酬体系を決定する三つの要素 弁護士法と行政書士法の規定と費用の考え方
行政書士が契約書作成の報酬を定めるにあたっては、その業務範囲が他の法律専門職と明確に区分されており、これが費用の考え方に影響を与えています。ここで、専門用語として弁護士法第七十二条、非弁護士行為、そして公正証書作成の追加費用という三つの点を解説します。
まず、弁護士法第七十二条と非弁護士行為です。
弁護士法第七十二条
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求その他一般の行政事件に関する法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
この条文の解説ですが、行政書士は、紛争性が生じている訴訟事件に関する代理業務や、法律相談を報酬を得て行うことはできません。行政書士の業務は、紛争予防を目的とした契約書や公正証書の原案作成、官公署に提出する許認可書類の作成といった「書類作成」と「提出代行」に限定されています。
行政書士の報酬は、この「紛争予防のための専門的な書類作成」という専門業務に対する対価であり、弁護士の報酬が「訴訟代理」といった紛争解決業務の対価であるのと異なります。そのため、行政書士は、訴訟に発展するリスクを事前に排除するための、徹底した予防法務に特化しており、この予防的措置の専門性が報酬の根拠となります。
次に、公正証書作成の追加費用です。公正証書は、契約書作成費用に行政書士が公証役場との事前調整業務を行うことによる報酬が加算されます。さらに、公証役場に対しては、公証人手数料令に基づき、遺言や金銭消費貸借契約などの目的価額に応じて、別途公証人手数料を支払う必要があります。行政書士の報酬とは別にこの公証人手数料が発生すること、そして、この手数料の算定基準(目的価額)が報酬の相場を決定する一つの要素となることを理解しておく必要があります。
目的価額とは、公正証書で扱う財産の経済的価値のことで、例えば金銭消費貸借契約であれば貸し付けた金額、遺言書であれば相続させる財産の金額です。公証人手数料は、この目的価額に応じて段階的に定められています。
行政書士の報酬の考え方として、これらの法的規制と公証人手数料を背景に、「この契約書が将来の訴訟をどれだけ防ぐか」というリスク回避の価値を行政書士が判断し、それを報酬として設定している、と理解することが重要です。
契約書作成における報酬と費用の考え方の例
行政書士が契約書作成の報酬を提示する際、具体的な費用の考え方は、以下のような要素を基に、個別の見積もりとなります。
契約書作成費用の考え方の例
1 基本報酬
契約書の難易度(例 単純な売買契約か、複雑な国際業務委託契約か)に基づき決定される。
2 加算報酬
ページ数の増減、準拠法に関するリサーチ、相手方との文案調整に要する時間など、追加の作業量に応じて加算される。
3 公正証書作成支援費用
公証役場との事前協議、必要書類の収集、当日の立ち会いなど、公正証書作成手続きのサポートに対する報酬。これは、公証人手数料とは別に発生する。
この費用に加え、公証人手数料、内容証明郵便の費用、交通費などの実費が別途加算されます。
専門家への費用は訴訟費用を抑えるための先行投資である
契約書作成にかかる行政書士への報酬は、決して無駄な支出ではありません。それは、将来のビジネスの不確実性や、家庭内の争いの可能性という、目に見えないリスクを明確なコストで引き受けてもらうための費用です。
万が一、紛争が裁判所に持ち込まれた場合、弁護士への着手金や成功報酬、裁判費用、そして何よりも事業の停滞による機会費用は、契約書作成費用を優に超えます。専門家に支払う報酬は、この高額な「紛争解決費用」をゼロにするための予防費用であり、この視点を持つことが、事業経営における賢明な判断と言えるでしょう。
書類作成の専門家は、お客様が気づかない契約の「抜け穴」や「落とし穴」を、その法的知識と経験に基づいて徹底的に洗い出します。手間や費用を惜しまず、専門家の客観的な視点と法的知見を取り入れることが、お客様の事業と生活の安全を、長期にわたって守るための最も確実な方法です。
明確な報酬基準と安心のサポート体制 まずは無料の見積もりから
契約書作成や公正証書に関する専門家への依頼は、費用対効果が非常に重要です。当事務所では、お客様の具体的なご要望、取引の内容、そして契約の難易度を詳細にヒアリングした上で、明確な報酬基準に基づいたお見積もりを事前に提示いたします。予期せぬ追加費用が発生しないよう、透明性の高い料金体系を徹底していますのでご安心ください。
公正証書作成の費用についても、公証人手数料の概算額を含めて丁寧にご説明し、お客様が納得された上で手続きを進めます。
ご相談は、お問い合わせフォーム、または公式ラインからお気軽にご連絡いただけます。まずは、お客様が作成を検討されている契約書の内容をお聞かせください。迅速な返信と、お客様の事業と生活の安心に繋がる具体的なお見積もりをご提示いたします。貴社の事業の法的安全と円滑な発展のために、専門家として全力でサポートさせていただきます。




