刑事告訴受理の確率は低いのか 契約書作成の専門家が教える告訴手続きの重要論点
はじめに
皆様、こんにちは。日頃より、契約書作成や公正証書作成を通じて、皆様の権利と利益の保護、そして紛争の予防という法務の観点からサポートさせていただいております。私たちの業務は主に民事的な側面にありますが、時として、依頼者の方々が刑事的な被害に遭われ、「警察に告訴したい」「告訴が受理されるか心配だ」といったご相談を受けることがあります。
特に「刑事告訴受理 される 確率」というキーワードで検索されている方は、何らかの犯罪被害に直面しており、警察に被害を訴えることを検討しているものの、実際に手続きを進めても無駄に終わるのではないかという不安と疑問を抱いていらっしゃると推察されます。その検索意図は、「告訴が受理されるための条件や、警察が重視するポイントを知りたい」「告訴状をどのように作成すれば受理されやすくなるのか」「告訴受理の後に捜査は進むのか」といった、手続きの実現可能性と実効性に関する情報を求めることにあるでしょう。
告訴は、単に被害を訴えるだけでなく、捜査機関に対して犯人の処罰を求める意思表示であり、被害回復の第一歩となる重要な法的手続きです。しかし、一般的に「告訴受理のハードルは高い」と言われることもあり、不安を感じるのは当然のことです。
この記事では、法律の専門家として、告訴受理の確率という漠然としたテーマに対し、手続き論の観点から光を当てます。特に、契約書作成や公正証書作成を通じて培ってきた、事実関係の明確化や客観的な証拠の書面化という技術が、告訴手続きにおいていかに重要であるかという点を含め、専門的な知見から丁寧かつ詳細に解説してまいります。
この記事でわかること
この記事を最後までお読みいただくことで、次の点が明確になります。
- 刑事告訴が持つ法的な意味と、告訴状が受理されるための基本的な要件、特に捜査機関が告訴を判断する際に重視する論点を理解できます。
- 告訴の手続きと、告訴が受理されない、あるいはためらわれる場合の背景にある、警察の捜査の相当性や事実の真実性といった判断基準を把握できます。
- 告訴人が持つ権利の一つである、告訴権が持つ法的な位置づけと、告訴が不当に拒否された場合の対応策について知ることができます。
- 契約書作成の専門家としての知見を活かし、被害事実を客観的な証拠に基づいて構成し、告訴の受理可能性を高めるための告訴状作成の重要なポイントを理解できます。
事例 融資契約における詐欺的な行為による被害
これはあくまで架空の事例であり、特定の事案に基づくものではありません。
D社は、新規事業の立ち上げにあたり、知人を介して紹介されたE氏との間で、事業資金の融資を受けるための契約を締結しました。E氏は、融資実行の条件として、高額な契約事務手数料を先に支払うよう要求しました。D社は、E氏が提示した「融資確約書」や「金銭消費貸借契約書」といった書面を信頼し、指定された銀行口座に事務手数料として500万円を振り込みました。
しかし、指定された融資実行日になっても、E氏からは何の連絡もなく、融資金も振り込まれませんでした。D社がE氏に連絡を取ろうとしましたが、電話はつながらず、事務所ももぬけの殻になっていました。その後、D社が調査したところ、E氏が提示した「融資確約書」に記載されていた融資元とされる金融機関は実在しないことが判明し、最初からD社を騙して事務手数料を詐取する目的であったことが強く疑われました。
D社は、この詐欺的な行為によって500万円の損害を被ったとして、警察に被害を相談しましたが、警察の担当者からは「民事的な紛争の可能性もある」「確実な証拠が不足している」といった理由で、すぐには告訴を受理してもらえない状況に直面しました。
D社の代表者は、E氏との間で交わした契約書や振込記録、そして虚偽と判明した融資確約書といった証拠一式を携え、刑事告訴の受理を実現させるための具体的な助言と、告訴状の作成支援について、行政書士に相談することになりました。
法的解説と専門用語の解説
告訴権
告訴権とは、犯罪の被害者やその法定代理人などの一定の者が、捜査機関に対し、犯罪の事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示をする権利をいいます。この権利は、刑事訴訟法に明確に定められています。
刑事訴訟法第230条
犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。
この条文は、被害者が告訴を行うことができるという、告訴権の根拠を示すものです。刑事告訴は、捜査の開始を促す重要なきっかけとなります。特に、親告罪(例えば、名誉毀損罪や器物損壊罪の一部)においては、被害者による告訴がなければ、検察官は公訴を提起することができません。
事例のD社のケースでは、E氏の行為は刑法上の詐欺罪(刑法第246条)に該当する可能性が高いです。詐欺罪は非親告罪であり、告訴がなくとも警察は捜査を開始できますが、被害者からの告訴があれば、捜査機関はより真摯に捜査に取り組む動機付けとなります。
告訴は、単なる被害届の提出とは異なります。被害届は、被害事実を単に警察に申告する行為であり、犯人の処罰を求める意思表示は必須ではありません。一方、告訴は、犯人の処罰を求めるという明確な意思表示を伴う、より重い法的な手続きです。告訴が受理されると、警察や検察官は、事件を捜査し、犯人を特定・追及する義務を負うことになります。
告訴権は被害者の重要な権利ですが、告訴状が提出されたからといって、警察が直ちに受理するとは限りません。警察は、告訴の内容が「真実性の高い犯罪」であり、かつ「捜査の必要性」があるかどうかを慎重に判断します。この判断の過程で重要となるのが、次に解説する「捜査の相当性」という考え方です。
捜査の相当性
捜査の相当性とは、捜査機関が、ある事件について捜査を開始し、進行させる際に、その捜査が法的に適切であるか、また必要十分な根拠に基づいているかという判断基準を指します。告訴を受理するかどうかを判断する際、警察は、単に被害者が告訴権を行使したというだけでなく、その告訴された事実が、客観的な証拠に裏付けられており、捜査するに値する犯罪の嫌疑があるかを総合的に判断します。
警察が告訴受理に慎重になる、あるいは「受理の確率が低い」と言われる背景には、次のようないくつかの理由があります。
第一に、告訴の内容が民事的な紛争に過ぎない可能性がある場合です。事例のD社のケースのように、契約の履行に関するトラブルのように見えても、実態が最初から騙す意図を持った詐欺行為であれば刑事事件となりますが、その区別は証拠がなければ難しいからです。
第二に、告訴の内容が虚偽である、あるいは真実性の裏付けが乏しい場合です。警察は、告訴が、個人的な感情や報復目的で行われたものではないか、また、告訴人の主張を裏付ける客観的な証拠が存在するかを厳しくチェックします。
第三に、すでに十分な捜査が尽くされている、あるいは証拠保全の必要性がないと判断される場合です。
つまり、告訴が受理される確率を高めるためには、捜査機関に「これは民事ではない」「虚偽ではない」「十分な証拠がある」と納得させ、「今すぐ捜査を開始することが相当である」と判断させる必要があります。事例のD社の場合、E氏が提示した融資確約書が虚偽であったこと、そして契約書に記載された融資の実行が一切なかったことなどを、銀行の振込明細や契約書という客観的な書面に基づいて明確に示すことが、捜査の相当性を認めさせるために不可欠となります。
行政書士は、この「捜査の相当性」を高めるための、事実関係を論理的に整理し、客観的な証拠を添付した告訴状を作成する段階で、大きな役割を果たすことができるのです。
記事のまとめ
「刑事告訴受理 される 確率」という問いは、手続きの難易度に対する不安の裏返しです。しかし、告訴受理は確率の問題ではなく、告訴権の行使を裏付ける証拠と法的な構成の問題として捉えるべきです。告訴が受理されるためには、警察に対し、告訴内容が真実性の高い犯罪であり、かつ直ちに捜査を開始することが捜査の相当性に合致すると確信させることが重要です。
特に、詐欺罪のような経済犯罪の告訴では、被害事実を証明するための契約書、振込記録、やり取りの記録といった客観的な証拠の存在が決定的な意味を持ちます。
私たち行政書士は、契約書作成や公正証書作成を専門としており、この点が告訴手続きにおいて大きな強みとなります。事例のD社のケースのように、告訴状を作成するにあたり、E氏との間に存在した「融資確約書」「金銭消費貸借契約書」といった書面の内容を詳細に分析し、E氏の行為が契約の不履行ではなく、最初からD社を欺くための詐欺的な行為であったことを、契約書面に記載された義務と実際の行動の乖離という論点から、論理的かつ明確に構成するサポートを提供します。
証拠となる書面を正確に解釈し、法的な因果関係を明確にした告訴状は、警察の判断を大きく左右します。告訴状は、単なる作文ではなく、告訴権を行使するための、法律の専門家による法的な主張書面でなければならないからです。
もし、犯罪被害に遭われ、告訴手続きを検討されている方がいらっしゃいましたら、まずは被害事実とそれを裏付ける証拠(特に契約書などの書面)を行政書士に相談してください。客観的な証拠に基づき、法的な視点から構成された告訴状を作成することで、告訴が受理され、事件が前に進む可能性を飛躍的に高めることができます。




