内容証明の文字数制限と超過(オーバー)した場合の適切な対処法

はじめに

契約の解除、代金の催促、時効の援用など、法的な効力を持つ重要な意思表示を行う際、その意思表示を正確に相手方に到達させたという証拠を残すために、「内容証明郵便」が広く利用されます。この内容証明は、郵便局が文書の内容を謄本によって証明するという点で、非常に強力な証拠能力を発揮します。しかし、この内容証明郵便を利用するためには、単に文書の内容が正確であるだけでなく、郵便事業が定める厳格な「形式」のルールを守らなければなりません。

そのルールの中で、作成者が最も頭を悩ませる問題の一つが、文書の「文字数制限」です。法的な主張は、事実関係の説明や、その主張の根拠となる条文の引用などが必要となるため、どうしても長文になりがちです。一生懸命に作成した重要な文書が、いざ郵便局に持ち込んだ際に「規定の文字数を超えているため受付できません」とされてしまうと、時間的なロスだけでなく、精神的な焦りも生じます。特に、時効の完成が迫っている場合や、契約解除の意思表示を急ぐ必要がある場合は、一刻を争う事態になりかねません。

この記事では、内容証明郵便の文字数に関する正確なルールを解説した上で、もし文書が規定を超過してしまった場合に、法的な主張を弱めることなく、どのようにその問題を解決すべきかについて、具体的な対処法を丁寧に説明いたします。

この記事でわかること

この文章をお読みいただくことで、内容証明郵便を作成する際に遵守すべき文字数の具体的な制限を、用紙の種類ごとに明確に理解できます。また、作成した文書がその制限を超過してしまった場合でも、重要な法的な主張や事実関係の説明を省略することなく、郵便局に正式に受け付けてもらうための実務的な解決策を知ることができます。

さらに、文字数制限という制約を逆手に取り、いかに主張を簡潔かつ明確に伝えるかという、法務文書作成における専門家の技術的な視点についても理解が深まります。

事例

中小企業を経営するDさんは、取引先との間で締結していた継続的な業務委託契約を解除する必要に迫られました。取引先の度重なる契約違反があったため、Dさんは損害賠償請求も視野に入れ、契約違反の具体的な経緯、これまでの再三の是正要求の事実、そして契約書に定める解除条項の引用を含めた「契約解除通知書」を内容証明郵便で作成しました。

Dさんは、通知書に漏れがないよう詳細に経緯を記述した結果、作成した文書は縦書きの用紙を使用し、二枚にわたるものでした。しかし、郵便局に持ち込んだところ、局員から「一枚あたりの文字数制限をわずかに超過している箇所があり、このままでは受付できません」という指摘を受けました。Dさんは、これ以上、解除の根拠となる事実関係を削ってしまうと、将来的な法廷闘争において不利になるのではないかと不安に感じています。特に、契約解除の意思表示は、相手方に到達した時点からその効力が発生するため、速やかに送付手続きを完了させたいと考えています。

このように、重要な主張を盛り込む必要性から、内容証明の規定文字数を超過してしまった場合、Dさんはどのように文書を手直しし、迅速に手続きを完了させることができるのでしょうか。(あくまで、これは内容証明の形式上の問題とその解決策を解説するための架空の事例です。実際の事案においては、個別の状況や契約内容によって法的な判断が異なることにご留意ください。)

法的解説と専門用語

この事例が示す形式上の問題を理解するために、二つの重要な用語について解説します。

用語その一 内容証明郵便の制限

内容証明郵便の制限は、郵便法に基づく規則によって細かく定められています。これは、郵便局が謄本を保管し、その内容を証明するという特殊な性質を持つため、文書の形式を統一し、事務処理の正確性を担保する必要があるからです。文字数に関する主な規定は、用紙の種類によって異なります。縦書きの場合、一枚あたり「二十字以内」で「二十六行以内」に収める必要があります。

横書きの場合、一枚あたり「二十字以内」で「二十六行以内」、または「十三字以内」で「四十行以内」、あるいは「二十六字以内」で「二十行以内」のいずれかの形式を選択することになります。この制限を少しでも超えた文書は、原則として内容証明として受け付けられません。この厳格な形式の遵守は、内容証明という制度の信頼性の基盤となっており、作成者はこの制限内で主張をまとめる技術が求められます。

用語その二 契約解除の意思表示

内容証明郵便で送る文書の中でも、特に重要なものの代表例が、契約解除の通知です。契約を解除するという意思表示は、相手方に到達した時からその効力を生じます。この意思表示は、その後の当事者間の権利義務関係を根本から変えるため、曖昧さがあってはなりません。民法には、契約の解除に関する規定があります。

民法第五百四十条
当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。

この条文が示す通り、解除の意思表示は、相手方に対する一方的な通知によって行われます。法的な効力を持たせるためには、「私は契約を解除します」という明確な意思表示と、その解除が正当であることを示す根拠を文書中に含める必要があります。条文の解説解除の意思表示は、一度行うと原則として撤回できない非常に強い法的な行為です。

したがって、この意思表示の核となる部分を文字数制限のために省略したり、曖昧にしたりすることは、将来の紛争において、解除の効力自体が争われるリスクを高めます。上記の事例のように文字数が超過した場合、単に文章を短くするのではなく、この「解除の意思表示」と「その根拠」をいかに明確に維持したまま、簡潔にまとめるかという、専門的な技術が必要となるのです。

文字数オーバーへの具体的な対処法

内容証明の文字数制限を超過してしまった場合、焦らずに、以下の具体的な対処法を検討することが重要です。

規定の正確な再確認と用紙の選択

まずは、使用している用紙の形式(縦書きか横書きか)と、その形式に適用される規定(行数と文字数)を正確に再確認してください。横書きの場合、三つの異なる形式が認められています。特に主張が長文になる場合は、「十三字以内、四十行以内」など、行数を多く取れる形式を選択し直すことで、解決できる場合があります。形式を途中で変更しても、内容証明の法的な効力には影響はありません。

文章構成の見直しと洗練化

これが最も根本的な解決策であり、専門家が最も注力する点です。事実と主張の分離 経過の説明(事実)と、法的な要求(主張)を明確に分けます。事実関係の詳細な説明は、内容証明の本文から可能な限り削り、代わりに「別途資料として添付する」という形を取ることを検討します。添付書類の活用 内容証明郵便には、その本文以外に、契約書や証拠となる書類を添付することが可能です。ただし、内容証明として証明されるのは本文のみであるため、添付書類の内容を本文で引用し、「詳細は添付資料の通り」と記載することで、本文の字数を大幅に削減できます。添付書類自体は、文字数制限の対象外です。無駄な表現の徹底的な削除 接続詞や、過度な丁寧語、重複した意味を持つ表現を削除し、一文一文を法的な意味合いが明確な簡潔な文章に削ります。「〇〇という事実がありましたので、私は〇〇を要求します」といった冗長な表現を、「〇〇に基づき、〇〇を催告します」というように、法律用語を用いて圧縮します。

枚数の増加による対応

内容証明は、何枚になっても構いません。縦書きの場合、一枚あたりの最大文字数は五百二十文字ですが、二枚にすることで一千四十文字まで記述が可能です。文字数が超過している原因が「一枚目の後半だけ少しはみ出している」という状況であれば、思い切って改行を調整し、二枚目に繰り越すことで、文字数を調整することができます。ただし、枚数が増えるごとに郵便料金も増加しますので、この点は考慮が必要です。

専門家による要約の技術

内容証明の作成代行を専門とする行政書士は、この文字数制限内で、いかに依頼者の主張を正確かつ強力に伝えるかという「要約のプロフェッショナル」です。自力で文章を削る場合、どうしても重要な法的な根拠や時効の催告といった部分を誤って削除しがちです。

専門家は、法的効力に影響を与えない冗長な部分を削り、民法の条文の正確な引用や、時効の完成猶予に必要な「催告」の意思表示を、規定の文字数の中で最も効果的に配置する技術を持っています。文字数超過という問題は、同時に、あなたの主張が「まだ洗練されていない」というサインでもあります。この機会に、第三者である専門家に文書を見てもらうことで、主張の客観性も高まり、一石二鳥の効果が期待できます。

記事のまとめ

内容証明郵便の文字数制限は、単なる形式的なルールではなく、作成者に対して「あなたの主張を法的に必要な要素だけに洗練させなさい」というメッセージを発しています。文字数がオーバーしてしまったという事実は、決して手続き上の失敗ではなく、主張をより簡潔かつ強力にするための見直しの機会と捉えるべきです。重要な契約解除の意思表示や、時効の完成猶予のための催告など、法的な効力が問題となる文書においては、文書の形式を守りつつ、内容の正確性を維持することが極めて重要です。

安易に文章を削ることで、将来的に大きな法的リスクを負うことになりかねません。契約書作成や公正証書原案の作成を専門とする者として、規定の文字数内で主張を最大限に伝える文書作成のサポートは、私たちの得意とする分野です。文字数という壁に直面し、主張の簡略化に不安を感じる場合は、ぜひ法務文書作成の専門家にご相談ください。形式を整え、法的に完璧な内容証明を送付できるよう、サポートさせていただきます。