行政書士の専門知識で解説 彼氏の結婚の意思を確認する方法と既婚者だった場合の法的な準備 行政書士の契約書作成サポート

はじめに

人生のパートナーを見つけるための真剣な交際において、相手の誠実さ、特に結婚に対する意思や独身であるという事実は、最も重要な前提となるものです。しかし、恋愛感情が深まるにつれて、言葉だけの約束ではなく、将来の計画について確固たる保証が欲しいと考えるのは、当然の心理と言えるでしょう。

特に、交際期間が長くなったり、年齢を重ねるにつれて、相手が本当に結婚を考えているのか、あるいは、まさか既婚者であるといった隠された事実はないのかといった不安は、心を蝕む深刻な問題になりかねません。もしもの時に、感情的な痛手だけでなく、法的な紛争に巻き込まれたり、貴重な時間を無駄にしてしまったりする事態は避けたいものです。

このようなデリケートで個人的な問題に対して、行政書士という法律の専門家は、単に気持ちを共有するだけでなく、法的な視点から将来のトラブルを未然に防ぎ、依頼者の権利を保護するための具体的な「仕組み作り」を支援することができます。それは、お二人の間で合意した内容を正確に、かつ法的に意味を持つ文書として作成することです。

この記事では、交際相手の結婚の意思を明確にするための方法と、万が一彼氏が既婚者だったという最悪の事態に直面した際の法的なリスク、そしてあなたが取るべき準備について、専門家の立場から丁寧に解説いたします。

この記事でわかること

この記事を読み進めていただくことで、あなたは真剣な交際を続けるにあたり、法的な観点から以下のような重要な事柄を理解し、今後の行動に役立てることができます。

まず、交際相手の独身であるという事実と結婚の意思を、単なる口約束ではなく、合意書などの書面として残すことの重要性と、その具体的な活用方法について知ることができます。これにより、将来的な「言った」「言わない」の争いを防ぐ、堅実な法的準備が可能になります。

次に、もし交際相手が既婚者であったと判明した場合に、あなたが負う可能性のある法的リスクと、逆に彼に対して請求できる法的権利について、具体的な専門用語の解説を交えて明確に把握できます。特に、彼が独身だと偽っていた場合の貞操権侵害という考え方について深く理解を深めることができます。

そして、これらの不安を解消し、ご自身の権利を法的に保護するために、行政書士が契約書や公正証書作成のサポートを通じて、どのようにあなたの未来のトラブル防止に貢献できるのか、その具体的な業務内容を知ることができます。

事例

これは、真剣に結婚を考えていたある女性の架空の事例です。あくまでも、法的問題の解説のための事例であり、特定の個人や団体とは一切関係がありません。

会社員のA子さん（三十代）は、同じ職場の部署が異なるB男さん（四十代）と一年半真剣に交際していました。B男さんは穏やかで優しく、常に「結婚したら、こんな家に住みたいね」「子供は二人欲しい」などと具体的な将来の展望を語り、A子さんも彼を将来の伴侶だと信じて疑いませんでした。二人で家具店を見て回ったり、お互いの親友に紹介しあったりもしていました。

しかし、交際一年半を過ぎた頃から、B男さんは週末の予定を頑なに明かさなくなり、電話もメッセージも返信が遅くなることが増えました。A子さんが不安を感じて問い詰めたところ、B男さんは言葉を濁すばかりで、明確な返答を避けました。

疑念に耐えかねたA子さんが、ある日、B男さんのスマートフォンを偶然見てしまったところ、彼が別の女性と家族としてやり取りをしている様子を示すメッセージを発見しました。動揺しながらも問いただした結果、B男さんは結婚五年目の既婚者であり、週末に連絡が取れなかったのは家族サービスをしていたからだと告白しました。

A子さんの頭の中は真っ白になり、裏切られた悲しみと怒り、そして一年半という貴重な時間を、結婚の意思も独身の身分もない男性に費やしてしまったという後悔に苛まれました。すぐに別れることを決意しましたが、A子さんは、彼が独身であると信じていたがゆえに、精神的な、そして肉体的な関係を持ったことで、自分が大きな損害を被ったと感じました。また、真剣に考えていた結婚生活のために貯めていた貯金もあり、この時間と労力に対する賠償を求めるべきか悩んでいます。さらに、もしB男さんの奥さんから自分が不倫をしたと訴えられたらどうなるのかという、新たな不安も押し寄せてきました。

この事例からもわかる通り、口約束だけで進めてきた交際が破綻した場合、精神的なショックはもちろんのこと、法的なリスクにも直面します。もしA子さんが交際前に「独身であることの確認」や「一定期間内に結婚の意思が履行されない場合の取り決め」について、法的に有効な書面で合意を得ていれば、その後の対応はより明確で、迅速に行えた可能性があったかもしれません。

法的解説、専門用語の解説

貞操権侵害の考え方

A子さんの事例において、B男さんが独身であると嘘をついていた場合、A子さんは彼に対して損害賠償を請求できる可能性があります。この請求の根拠の一つとなるのが、貞操権の侵害という考え方です。

貞操権とは、人が自己の自由な意思に基づき、性的な関係を結ぶ相手を決定する権利、または自己の意思に反して性的な侵害を受けない権利のことを指します。A子さんは、B男さんが独身であり、将来的に結婚する意思があるという前提があったからこそ、彼と真剣に交際し、肉体的な関係を持つことを選びました。

しかし、彼が既婚者であったという事実が判明した場合、A子さんの「独身の、結婚を前提とした相手と関係を持つ」という意思決定の自由が、B男さんの嘘（欺罔行為）によって侵害されたことになります。つまり、独身だと信じさせることで、性的な自己決定権を不法に侵害されたと法的に判断される可能性があるのです。これは、民法上の不法行為に該当し、精神的な苦痛に対する慰謝料を請求する根拠となります。

この不法行為による損害賠償について定めるのが、民法の条文です。

民法第七百九条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

この条文は、故意（わざと）または過失（不注意）によって、他人の権利や法的に守られるべき利益を侵害し、その結果、相手に損害を与えた者は、その損害を賠償する責任を負うことを定めています。B男さんが独身であると偽った行為は「故意」による「貞操権」という「法律上保護される利益の侵害」にあたり、A子さんに生じた精神的苦痛（損害）に対して賠償責任を負う、というのが貞操権侵害に基づく慰謝料請求の法的根拠です。

公序良俗の原則

もう一つ、知っておくべき重要な法律用語に公序良俗（こうじょりょうぞく）があります。これは「公共の秩序と善良の風俗」の略で、社会の一般的・普遍的な道徳観念、倫理を指します。

民法第九十条には、「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」と定められています。

B男さんが既婚者であった場合、彼とA子さんの交際、特に結婚の約束は、社会的な倫理に反する行為、すなわち公序良俗に反する行為と見なされる可能性が極めて高くなります。たとえば、既婚者が独身と偽って結婚の約束をしたとしても、その結婚の約束自体は、原則として公序良俗に反するため無効とされます。

したがって、A子さんが「結婚の約束を破られた」こと自体を根拠として慰謝料を請求することは原則としてできません。請求できるのは、あくまで「独身だと偽られたことによる貞操権の侵害」に対する損害賠償となります。また、A子さんがB男さんが既婚者であることを知った後も交際を続けた場合、A子さん自身が不貞行為の加害者となり、B男さんの配偶者から逆に慰謝料を請求されるという法的リスクが生じます。

行政書士は、こうした法的な知識を踏まえ、お客様の不安を解消するために、独身であることの確認や、既婚者であった場合の損害賠償に関する取り決めを明確にした合意書や契約書の作成をサポートいたします。これにより、万が一の場合の権利関係を明確にし、後の紛争リスクを最小限に抑えるための法的予防を図ることができます。また、作成した契約書に基づき、将来的な金銭の支払い（損害賠償など）に関して、より強力な法的効力を持たせるための公正証書の作成サポートも可能です。公正証書は、公証人が公証人法に従って作成する公文書であり、高い証明力と、特定の条項があれば裁判なしに強制執行できる執行力を持つため、将来の金銭トラブルの予防に極めて有効です。

５ 記事のまとめ

真剣な交際と将来の結婚を望むからこそ、相手の結婚の意思や独身の身分について、漠然とした不安を抱えるのは自然なことです。しかし、その不安をそのままにしておくと、万が一の事態に直面した際、感情的な痛手だけでなく、法的にも非常に複雑で不利な状況に陥る可能性があります。

結婚を前提とした真剣な交際においては、感情的な側面と同時に、将来的なリスクを回避するための法的な予防策を講じることが、あなたの貴重な時間と権利を守るために不可欠です。

行政書士は、法律上の権利義務や事実証明に関する文書の作成を専門としています。あなたの真剣な思いを裏切られないよう、交際相手との間で、独身であることの確認、結婚の意思、そしてもし既婚者であった場合の責任などについて、具体的な合意書や契約書として明確に残すお手伝いをいたします。

特に、既婚者であった場合の損害賠償請求など、将来的に金銭のやり取りが発生する可能性がある事柄については、その合意内容を公正証書として作成することで、後の手続きを圧倒的に有利に進めることが可能になります。これは、行政書士が公証役場との調整を含め、強力にサポートできる専門性の高い業務です。

大切な未来を守るための第一歩として、まずは専門家である行政書士に、あなたの抱える不安と真剣な思いをお話しください。法的な知識と文書作成のスキルをもって、あなたの安心と権利の明確化を誠実にサポートさせていただきます。