契約書作成の専門家選び 行政書士と弁護士の役割と選び方の違い
Contents
1 はじめに 簡単な挨拶
当事務所のブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。
事業を営む方であれ、個人間での重要な取引を控えている方であれ、契約書を作成する際には、「誰に依頼すれば最も安心で、かつ効率的なのか」という疑問に直面されることと存じます。特に、法律の専門家である行政書士と弁護士は、どちらも「契約書の作成」という業務に関わりますが、その法的根拠や業務の性質には決定的な違いがあります。
この違いを正しく理解していなければ、ご自身の状況に合わない専門家を選んでしまい、結果的に時間や費用を無駄にしたり、最も重要な目的である「将来のトラブルを予防する」という目的を達成できなかったりする可能性さえあります。
この度の記事では、契約書作成という文脈において、行政書士と弁護士がそれぞれどのような役割を担い、どのような違いがあるのかを、法律の観点からわかりやすく解説してまいります。皆様が専門家を選ぶ上での確かな判断材料を提供し、最善の選択ができるようにお手伝いすることが、この記事の目的です。どうぞ、ご自身の貴重な取引を確かなものにするためにお役立てください。
2 この記事でわかること
この記事をお読みいただくことで、契約書作成の専門家選びに関する皆様の疑問を解消し、ご自身のニーズに最も合った専門家が誰であるのかを明確にご理解いただけます。
具体的には、行政書士と弁護士が契約書作成において持つ、それぞれの法律上の権限の違いと、それによって生じる業務の性質の違いについて深く解説いたします。また、専門家選びで失敗しないための具体的な事例を通じて、行政書士に依頼することが特に有効となるのはどのようなケースなのかを具体的に把握していただけます。
さらに、法律の専門家としての根拠を示す条文を引用し、行政書士が「予防法務」の観点からどのように皆様のビジネスや生活を守るのかをご理解いただくことで、将来の安心を担保するための賢い選択をしていただけるようになるでしょう。この知識が、皆様の取引を安全に進めるための一助となれば幸いです。
3 契約書作成で後悔しないための選択
専門家選びの重要性を理解するために、ここで一つ、架空の事例を挙げてみましょう。この事例は、特定の個人や団体を指すものではなく、あくまで専門家選択の教訓としてお役立てください。
ここに登場するB社は、IT系のベンチャー企業で、大企業との初めての業務提携契約を結ぶことになりました。B社の経営者は、契約書作成の重要性は理解していたものの、費用を抑えたいという思いから、インターネット上の無料の契約書テンプレートを利用し、簡単な修正を加えただけで締結に臨みました。
しかし、そのテンプレートには、業務の遅延が発生した場合の損害賠償の上限に関する条項が曖昧であったり、知的財産の帰属に関する規定がB社にとって不利な解釈を生む可能性があったりといった、いくつかの重大な欠陥がありました。
契約締結後、提携先の大企業との間で業務の解釈を巡って意見の相違が生じ、最終的にB社は、テンプレートには記載されていなかった「予期せぬ費用」を負担せざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。この段階でB社が弁護士に相談したときには、すでに契約書が締結されており、その不利な条項に基づいて解決を図るしかなく、多大な時間と費用を費やすことになりました。
もしB社が契約締結前の段階で、行政書士のような予防法務の専門家に相談し、自社のビジネスモデルやリスクに合わせたオーダーメイドの契約書を作成していたならば、このトラブルは未然に防げた可能性が非常に高かったと言えます。行政書士は、契約がスムーズに履行され、将来の紛争の種を摘むことを最大の目的として、契約書を作成します。
一方、もしB社が契約締結後にすでにトラブルが発生し、相手方との間で交渉や訴訟を前提とする段階であれば、迷うことなく弁護士に依頼すべきです。なぜなら、次に解説するように、行政書士と弁護士では、法的に許された業務範囲が大きく異なるからです。専門家を選ぶ際には、「今、紛争が起こっているか、それとも将来の紛争を防ぎたいか」という視点を持つことが極めて重要になります。
4 法律専門家としての行政書士と弁護士の役割の違い
行政書士と弁護士は、どちらも法律の専門家ですが、その業務の根拠となる法律が異なり、許された権限にも明確な違いがあります。この違いを理解することが、適切な専門家を選ぶ上での鍵となります。
行政書士の業務と非紛争性
行政書士の業務は、行政書士法という法律に基づいて定められています。その主な業務の一つに、権利義務に関する書類の作成、すなわち契約書の作成が含まれます。
行政書士法第1条の2第1項には、行政書士の業務について、次のように規定されています。
行政書士法第1条の2第1項 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。
この「権利義務に関する書類」の中に、契約書や内容証明郵便などが含まれます。行政書士は、この規定に基づき、皆様の取引内容を法的に正確かつ明確な契約書として文書化することができます。
しかし、行政書士の業務には、決定的な制限があります。それは、紛争性のある事柄についての代理や法律事務を行うことができないという点です。すでにトラブルが発生し、相手方との間で交渉や和解といった法的争いが生じている事案は、行政書士の業務範囲外となります。行政書士は、契約書作成を通じて、将来の紛争を未然に防ぐ予防法務の専門家として活動します。
弁護士の業務と紛争性
一方、弁護士の業務は、弁護士法によって定められています。弁護士は、法律事務全般を取り扱うことができる唯一の士業です。
弁護士法第3条第1項には、「弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。」と規定されています。
この規定により、弁護士は、契約書の作成はもちろんのこと、すでに紛争となっている事案について、依頼人の代理人として、相手方との和解交渉、訴訟の提起、答弁書の作成など、紛争解決のためのすべての法律事務を行うことができます。これが、行政書士との最も大きな違いであり、弁護士は紛争解決の専門家という側面が強いと言えます。
法律用語の解説 契約自由の原則
契約書作成において重要な法律用語の一つに、「契約自由の原則」があります。これは、私法上の法律関係は、個人の自由な意思に基づいて形成されるべきであるという原則です。具体的には、個人は、契約を結ぶかどうか、誰と契約を結ぶか、どのような内容の契約を結ぶか、そしてどのような方式で契約を結ぶかを自由に決定できるということを意味します。この原則があるからこそ、私たちは、個々の事情に合わせたオーダーメイドの契約書を作成する必要があるのです。
その他、「債務不履行」や「損害賠償」といった用語も、契約書に必ず盛り込むべき事項を考える上で不可欠な概念です。行政書士は、これらの法律用語を適切に契約書の中に織り交ぜることで、契約当事者間の権利と義務を明確にし、万が一契約が守られなかった場合のルールを事前に定めることで、皆様の権利を守ります。
5 契約書作成における行政書士の強みと専門家選択の要点
契約書作成という業務に限定して考えるならば、行政書士には弁護士にはない独自の強みがあります。この強みを理解し、適切に専門家を選択することが、皆様にとって最も経済的かつ効率的な方法となります。
予防法務に特化した専門性
行政書士は、前述の通り、紛争性が生じる前の段階、つまり「予防法務」に特化して活動しています。この特性から、行政書士は、いかにして将来のトラブルを未然に防ぐかという視点に集中して契約書を作成します。契約書を単なる文書としてではなく、将来のビジネスの円滑な運営を支える「設計図」として捉え、細部にわたるリスクヘッジの条項を盛り込むことに注力します。
コストパフォーマンスの良さ
一般的に、弁護士は紛争解決という高度な専門業務を主として行うため、その費用は高額になる傾向があります。一方、行政書士は、紛争性を含まない書類作成に特化しているため、弁護士と比較して比較的リーズナブルな料金でサービスを提供できることが多いです。特に、ビジネスを立ち上げたばかりの方や、費用を抑えつつも確実な契約書を作成したい方にとっては、行政書士は費用対効果の高い選択肢となります。
専門家選択の要点
結局のところ、行政書士と弁護士のどちらを選ぶべきかは、皆様の「今の状況」と「依頼の目的」によって決まります。
もし皆様が、今まさに相手方と揉めており、交渉や裁判を視野に入れたいのであれば、それは迷わず弁護士にご依頼ください。
しかし、もし皆様が、これから新しい取引を始める、あるいは既存の契約書を見直して将来のトラブルを未然に防ぎたいという、予防法務を目的としているのであれば、行政書士にご依頼いただくことが、コストやスピード、そして予防の専門性という点で、最善の選択となるでしょう。私たち行政書士は、皆様のビジネスや生活を守るための堅固な契約書を、迅速かつ適正な価格で作成し、安心を提供いたします。
6 契約トラブルを未然に防ぐための第一歩
ここまで、行政書士と弁護士の違い、そして契約書作成における行政書士の役割についてご説明してまいりました。契約書は、ビジネスの生命線であり、皆様の権利を守る最後の砦です。その作成において、手間や費用を惜しみ、安易な選択をすることは、将来、それ以上の大きな損害を招くリスクとなります。
当事務所では、「予防法務こそ最良の防御である」という信念のもと、お客様の取引内容や業界特有のリスクを深く理解した上で、将来起こりうるあらゆる事態を想定した、万全の契約書を作成しております。
契約書の作成や見直しについて、少しでも不安や疑問をお持ちであれば、ぜひお早めにご相談ください。トラブルが顕在化してからでは、弁護士に依頼するしかなくなり、解決までの道のりが複雑化し、多額の費用が必要となる可能性が高まります。
私たちは、お客様の不安を一日でも早く解消するため、お問い合わせには迅速な対応を心がけております。お問い合わせフォームはもちろんのこと、ラインからのご相談も受け付けておりますので、場所や時間を選ばず、お気軽にご連絡いただけます。ラインでのご相談であれば、即座に状況を把握し、適切なアドバイスをさせていただくことが可能です。
皆様のビジネスと生活の「安心」を、確かな契約書という形にするお手伝いをさせていただけることを心より願っております。まずはお気軽に、ご相談の第一歩を踏み出してください。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。




